愛のかたまり
 心が鋭く尖り、途方もない虚無がやってくる。

「ちゃんと! ちゃんと栄養はとってる! けど、全然身に付かない。食べても、食べても。それにそんなこと人に言えるの、海さんだってがりがりじゃん」あたしの口は勝手に突き放すように言った。

 海さんは動じず、穏やかな表情のまま訊ねた。「じゃあ訊くけど、今まででいちばんおいしかったもの、言ってみて」

 何も思いつかなかった。食べ物なんて、ただ身体を維持するための物体でおいしいとかおいしくないとか考えなかった。

「何かを食べておいしいとか、あんまりわからない」

 つい正直に言うと、彼女はほらごらんというように溜息を吐いた。

「あのねえ・・・食事イコール栄養を摂取するってことじゃないの。餌じゃないんだから。ごはんを食べるってことはねー、もっと楽しくて幸せな瞬間なの。世の中においしいって言われるものはたくさんあるけれど、自分がおいしいって思わなければ全部嘘なの。子どもはおいしいって思えるものだけ、食べてればいいのよ」

「う、うん」

「それで、私のオムライスは? どうだった?」

「・・・・・おいしかった」

「そう」海さんは顔をくしゃくしゃにした。



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