愛のかたまり
 普段なら食べきれない巨大さのオムライスをたいらげ、ごちそうさまでしたと息を吐いた。

 海さんはにっこりと笑った。「そうね。ごちそうさまがきちんと言えるうちは、大丈夫。あなたはとてもいい子だわ」

 あたしたちはまたゲームをしたり、他愛もないお喋りをしたり、べつべつに本を読んだり、繰り返される日常のうちのひとつみたいに、それらを自然にとりおこなった。

 嘘みたいに時間はどんどん過ぎていった。

 彼女はあたしを、昨日まで周りに纏わりついていた大人たちみたいに「腫れ物に触るよう」には扱わなかった。ふたりで空間を公平に共有していた。

 ただ当たり前の存在として接する彼女の行動のすべてが、きつく縛られていた心を楽に解いていった。
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