愛のかたまり
 しとしとしとしとしとしとしとしとしとしとしと。

 いつの間にか雨が降りだし、夜が静かに降りてくる。

 あたしたちは並んでソファに座り、バリの写真集をひろげていた。本棚にはいくつもの画集や写真集が整然と並んでいて、そのうちバリのものがいちばん多かった。

 はげしくてあたたかな地。

 ぱっきりとピンクの花、どこまでもつよい葉群れの緑色、情熱を秘めて佇む海、美しい化粧を施して踊る女、少女のトランスした表情、個々のエナジーに満ちた人々。

 神様は絶対にいるって気がしてくるのよ、と海さんはぽつりと言った。

 ついさっきまではしゃいでにぎやかだったくせに、そう言った後は黙り込んで目を閉じた。しんとした部屋には雨音だけが存在し、ゆっくりと時間は流れていった。

 心がするするとほどけ、濁った闇の泥から這い出す。

 あたしは息をいっぱいに吸った。 
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