まだ好きです(完)
「遊びに…かぁ。」

「うん。ちょっと気晴らしに????どお?」


「2人で?」

「ん…ぅ、、、ん」

「どーしよっかな」


そんなはっきりしない会話が繰り返される。



もう夜に近づいてきているのが分かった。


グラウンドでは、グランド整備が始まり、部活動も終わろうとしていた。


「…そんなにさ、俺がいいの?」


え?…一瞬で重い空気が私達の間を通過した。



何…言ってるの?


「な…なんで?」


「俺、もう記憶戻らねーって、医者に言われてさ。待ってても、思い出さないよ?」



「…いいもん」


「は?」



「医者がいってる事なんて、信じるもんか!私は信じない!教えてくれたじゃん!信じろって。陸上大会の時、足痛めてる駿が「大丈夫。俺を信じろ」って、いってくれた。信じれば、必ず叶うんだよ。1%の確率でも、信じる、私、信じるから!」


はあ…はあ…はあ…






駿は、ぽかんとしていた。



「何してんだー。下校の時間だぞー。帰れ!」



交通指導の先生が懐中電灯の光をゆらゆらと、揺らしながら、こっちにやってくるのがわかった。


もう教室は真っ暗で、グランドからも、声は聞こえてこない。


気が付けば、夜の7時だった。



この暗さで、私の顔の赤さは気づかれなかっただろう。ちょっとほっとした。



でも、「信じる」なんて軽々しく言っちゃって、引かれたと思う。ドン引きかな。


急に恥ずかしくなってきた。あんな事言うんじゃなかった。



「帰る!!!!」



私は急いでカバンを持ち、教室を出て行った。








< 140 / 202 >

この作品をシェア

pagetop