平穏な愛の落ち着く場所
崇はケーキカットを終えて、
歓談になった所で、自分に瞳で合図する
冴子に付いて会場の外に出た。
『なんだよ、花嫁が浮かない顔して?』
『千紗がまだ来ていないの』
『は?』
『ねえ崇、ちょっと見てきてくれない?
ほら、あのこ昔から方向音痴でしょ』
『何で俺が?』
『他に頼める人がいないし』
『んなこと言っても、ホテルに着けば
わかるだろ?』
『まだここに居ないと思うから言ってるの』
『はあ?』
『駅からだとこのホテルまで、ちょっと
距離があるし……』
『アホか、駅からならタクシーで来るに
決まってるだろ?
何分歩くと思ってるんだ』
『だから、言ってるのよ!
あのこきっとバスも使わないと思うから』
『おまえ、誰の話をしてるんだ?
さっき千紗って言ったよな?』
おろおろと心配そうに、廊下を見る
冴子に、訳がわからないという顔の
崇の眉間に皺がよった。
そこへ息を切らせた本人が駆けてきた。