夏と秋の間で・甲
「あのさ・・・・・。」



「いいよ。・・・・何も言ってくれなくて、いい。」



 まとまらない答えを出そうとした瞬間、亜紀の声が覆いかぶさる。



「え?」



「分かってるよ・・・・望巳がどれだけ大場さんのことが好きなことぐらい・・・。」



 どこか切なそうな亜紀の声。



「・・・・・・・・・」



 ソレに対して、返す言葉が見つからない・・・・。



「だから、望巳は無理に私の方を振り向いてくれなくていいんだ。私は望巳に何も望まないし、望巳に無理して、私のほうを振り向いてほしいなんて思わない。」



 亜紀の声が震えているのが分かる。



 顔を見ると、眼が潤んでいるのが見えた。



 え?悲しいのか・・・・?どうして・・・・?



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