シークレット・ガーデン ~禁断のキス~【更新停止中】


発声練習が終わり、立ち稽古に移る。


すでにキャストの変更は伝えられていたらしく、実里は当然のようにクリスティーヌ役として板付いていた。


『Think of me』……


クリスティーヌが一人で歌う場面。


とにかく最初からやりなおしなので、一人の場面からさらっていこうというのだろう。


ラウル役の涼介は、その歌に向かって『ブラボー!!』と叫ばなければならない。


スタンバイしている彼は、なんとも微妙な顔をしている。


話をしたかったのに、その機会はなさそうだった。



やがて、優しいピアノの音がしはじめる。


ああ、あそこでこの前まで歌っていたのは、あたしだったのに───。


涙が溢れ、視界がぼやける。


耳には、あの気持ち悪い高音が突き刺さった。


< 222 / 245 >

この作品をシェア

pagetop