夢花火





低い建物。

着物で歩く人々。

男は、腰に刀。



私の目の前には、まるで時代劇のような風景が広がっていた。



歩きながら、私はその人に尋ねる。



「あの…。ここはどこですか?」



その人は振り返り、少し微笑みながら答えた。



「ここは、京ですよ」



京…。


私、今京都にいるのか…。




いやいや、簡単に納得するな。冷静になれ。


私が住んでいるのは東京で、こんなところにいるはずないのだから。




「嘘言うのやめてもらえます?」



「私は嘘は嫌いです」




この状況でよくそんなにこやかに言えるものだ。


面倒に感じて、それ以上は何も言わなかった。


自分の今の状況が、全く分からない。


混乱した状態のまま、気づけばある建物の前にいた。



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