君にすべてを捧げよう
「一ヶ月! いいわー、今が一番ラブラブってやつだよね」

「らぶらぶ?」


そうなのかな。悶絶しそうなくらい恥ずかしいのだけれど、そう表現される時期なのかな。
思わず赤くなると、興奮しているつぐみは「そうよう!」と断言した。


「照れちゃってー、もう。今はさ、大好き! もうすごく大好き! な時期でしょう?」


大好き? あたしが、鏑木さんを?
ふ、とあの綺麗な顔を思い出す。キスをするときの、少し官能的な表情が蘇ってしまい、益々赤面した。


「うわ、何だか新鮮でいいなー。
ん? あれ? ねえ、なんでめぐるは彼氏が出来たばかりの貴重な休日の午後を私と過ごしてるの?」

「え?」

「ダメじゃん! 私のことは放っておきなって!」

「あ、いや、鏑木さんはその、実家に帰ってるんで。はい」


美容室を経営している鏑木さんの実家は、隣県にあるらしい。ここから車で二時間ほどの距離だと聞いた。

『オヤジが寂しがってるんで、ちょっと行って来るね。夕方には戻ってくるから、会いに行くね』

今朝、鏑木さんはそ出発前にそんな内容の電話をくれた。


「夕方には帰って来るし、それに明日はお休みだから、泊まれるっていう、し……」


言いながら、その内容が暗に示すことに思い至る。
は、と口を噤んだが、つぐみはそれを理解したらしい。にやり、と笑った。


「あっらあ? それは、尚更お邪魔したらダメよね。けんたー! 帰るわよー!」

「え、ちょ、待ってよ、つぐみ」

「支度とか、あるでしょ? 今度ゆっくり話聞かせてよね。ほらほら、けんた、早く用意する!」


つぐみは、あたしが引き止めるのも聞かずに帰って行ってしまった。





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