君にすべてを捧げよう
「開けてくれ、めぐる」

「れ、蓮……?」


どうして。
混乱しながら扉をあけると、そこには荷物を抱えた蓮が立っていた。

外灯に照らされた顔は酷く疲れていて、頬はげっそりとこけていた。
髪は乱れ、髭も伸びている。

向かい合うと、じっと見降ろされた。


「ど、どうしたの、蓮」

「原稿を仕上げたい」

「仕上げたい、って……」


ここまで追い詰められた様子の蓮は、見たことがなかった。
美恵さんの死に向き合っていたあの時期を思い出させるくらいに、憔悴している。

蓮、彼女が出来たんじゃないの?
お世話してもらってるんじゃないの?
どうしてそんなに追い詰められてるの?


「れ」
「あ、やっぱり坂城さんだ」


にこにこと、鏑木さんが出てきた。


「こんばんは。声、そうかなーって思ったんですよ。お仕事大変なんですか?」


笑いかけられて、蓮は困ったように眉間に皺を寄せたまま頷いた。


「……ええ。お恥ずかしながら切羽詰まってまして。母屋には入りませんので、気にしないで下さい」


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