君にすべてを捧げよう
蓮の顔が再びあたしに向けられる。


「じゃあ、めぐる。向こう使うから」

「う、うん……」


一旦背を向けた蓮だったが、くるりと振り返った。


「ああ、それと、食事の心配もいらない。もう少ししたらこっちに瑞穂が来るから、仕事中の面倒は瑞穂に全部任せる」


どくん。蓮の口から零れた名前に心臓が反応する。
こんな時間から、瑞穂さんを、呼ぶ?
執筆中の、離れに?


「わ、わかった」


動揺を隠し、どうにか頷いた。


「じゃあ」


今度こそ、蓮は離れの方へ行ってしまった。


「作家さんって大変そうだねー。でも、母屋に入らないって、どうするんだろ?」

「離れには、簡易キッチンもトイレも揃ってるから……」


祖父に先立たれた祖母が自分一人の生活を満喫するために、大がかりなリフォームを行った離れは、そこだけで生活が賄える。
狭いけれど、浴室も完備されているのだ。


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