君にすべてを捧げよう
「け、けっこうです! そんなことされたら、のぼせて死にます!!」

「えー、残念」


思わず大きな声で言うと、鏑木さんは愉快そうに肩を揺らして笑った。
けれど、ひょいと降ろしてくれる。


「それはいつかのお楽しみにしておこう。じゃ、お風呂入ってきます」

「ど、どうぞ!」


笑いの収まらないまま、鏑木さんは浴室へと行った。
それを見送ったあたしは、そのまま客間に向かった。
布団を出しかけて、はたと動きを止める。


「一組で、いい、よね……」


自分の呟きに、どきりとした。

や、やっぱり、あたしもここで寝ることになるのだろうか。
となれば、もう一組布団を敷いた方が?
いやでも、『一緒に寝ましょ』的なアピールみたいで、それはそれで恥ずかしいんだけど、
とは言っても、まさか鏑木さんがここで一人で大人しく寝るとも思えないし……。

悶々と悩んだ結果、あたしは部屋の中央に一組だけ、布団を敷いた。
どう言いつくろってみても、二つ敷く勇気はなかったのだ。


枕元に行燈風のランプを置き、支度を整えた。


「よし、これでいっか。よ、と……」


灯りを消し、リビングに戻ろうとした。
が、ふと思いたち、縁側へ続く障子を少しだけ開ける。

庭の向こうに、離れが見える。
蓮がいるだろう部屋の障子には、当たり前だけれど灯りがついている。


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