君にすべてを捧げよう
「――千佳ちゃん、背中冷たい」

「ふえ? ええええええ!? す、すみません!!」


安心して寝ていられないシャンプーの練習台になっていると、背中に生ぬるいものが伝った。
手こずってるなあ、とは思っていたけど、やっちゃったかー。


「い、いま椅子起こします!」

「ストップストップ! 先に流してね」


泡はまだ残ってるし、タオルも添えられてないのに起こされたらもっと酷いことになってしまう。
すっかり気が動転している千佳ちゃんをなだめながら、練習台の務めを終えた。


「す、すみませんでしたぁ……」

「いーよいーよ、こうやってうまくなってくんだしさ。気にしないで」


濡れた髪を乾かしてくれている千佳ちゃんが、半泣きで頭を下げる。


「馬渡くんなんてお客様におんなじことやったことあるんだよ? でもほら、今は上手いでしょ。だから千佳ちゃんもだいじょーぶだって」

「でも、服が……」

「え? ああ。ドライヤーで乾か……すには少し濡れすぎかな」


タオルで拭いたものの、カッターシャツの背中部分は大半が濡れていたせいか完全には乾いていない。
なんだか気持ち悪いし、ブラまで濡れているんだろう。


「どうせ家に帰るだけだし、まあいっか。このままでいいよ」

「そんな、でも……」


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