君にすべてを捧げよう
翌日は、仕事が終わるとまっすぐ自宅へ戻った。

自宅の駐車場に車を停める。
横に二台並んだ、蓮と瑞穂さんの車を見やって、重たいため息をついた。


あの日からずっと、蓮は離れにいる。


本格的にこちらに住まいを移したのではないかというくらいで、先月辺りから雑誌の編集さんもここまでやって来るようになり、蓮宛ての郵便物までもがここに届くようになった。
瑞穂さんも、しょっちゅうここにいて、蓮の世話をしている。


一体、何を書いているんだろう。


恥ずかしさを堪え、書店で蓮が連載している雑誌を確認して見たら、どれもきちんと掲載されていた。
他を見ても、新連載が始まった様子もない。
仕事の量は増えていないはずなのだ。でも、寝る間も惜しんで何かをしている。


「なに、してるんだろう……」


離れについた灯りを遠くに眺めながら呟いた。

蓮とはまともに顔を合わせていない。
たまに、ふらふらと池の傍を歩いているのを見かけるが、横には必ず瑞穂さんがいて、声をかける気にならない。
蓮も、あたしに気がついてもふいと顔を逸らす。

だから、何にそんなに追われているのか、全くもってわからないのだ。


「関係、ないけどさ」


独りごちて、母屋の玄関へ向かう。

蓮の関係者たちは、母屋を訪ねてくることはない。
なので、あたしは一切気を遣わなくていいのだけれど、それでも、どうにも居心地が悪い。


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