君にすべてを捧げよう
テーブルに置かれたノートを取り上げ、続きを読む。
何度も見たはずの活躍は、大人になった今でもわくわくさせてくれた。
どうしてこんなにも、蓮のお話はあたしを夢中にさせるのだろう。


「なーに読んでるのぉ?」


話も終盤、エピローグを読んでいると、背後から声がかかった。


「うっわわわわ! み、瑞穂さん!?」

「お風呂頂きましたー」


振り返れば、湯上りの瑞穂さんが立っていた。
いつもはサイドに流している前髪を黒ピンで適当に止めて額を露わにしており、それが化粧気のなくなった顔と相まって酷く幼く見えた。
しかし、服装はと言えば、豊かな胸が強調される黒のキャミソールに、ジャージ素材のホットパンツ。
女のあたしでさえ、どきりとする格好だった。

これで、蓮のいる部屋に戻るのだろうか。


「で、何読んでたの? ノート?」

「あ、これはその、何でもないです!」


慌てて背中に隠したが、瑞穂さんは隠されたものが何なのかわかったらしい。
あれでしょ、と呟いた。


「蓮がめぐるちゃんに贈ってたっていう、童話でしょ? 前に美恵から聞いたことがあるわ」

「え、と……、まあ、はい」

「誰にも見せないんですってね。自分の物だからって。それも聞いてるから、そんなに必死に隠さなくても大丈夫よ。見せてなんて言わないわ」


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