君にすべてを捧げよう
だって美恵さんは蓮のことを想っていて、蓮がどれだけ遊んでも帰りをじっと待っていて、そんな人が、蓮以外の子を妊娠して、結婚?

信じられない。

だって、彼女は確かに蓮を想っていた。

けれど、それはあたしの思い込みだったのか。


「蓮が退院する前、黒田さんが病院にやって来たの。私や蓮の両親、美恵の両親も、彼に呼ばれていた。
皆の前で、彼は土下座したの。美恵さんを殺したのは自分です、って。
蓮はさっきまでの無気力ぶりが嘘のように大きな声を上げて止めたけれど、黒田さんは告白を始めた」


最初に手を出したのは、自分だった。
健気な美恵さんに興味を持ち、人気作家の恋人を奪うと言うのも面白そうだと思ったのだ。
蓮には遊びを勧め、その間に、美恵の心の隙間に入り込んだ。
疲れ切っていた彼女は、次第に心を開き、深い仲になった。


「間違っても偽りは言いません、美恵さんに誓いますと言って、彼は続けたわ。
蓮は諦めたのか、辛そうに目を閉じた」


躰を重ねる頃には、自分も美恵を憎からず思うようになった。
が、だからと言ってそこから先を考えたわけではなかった。
けじめをつけて蓮に頭を下げることもできないし、かといって別れることもできなかった。
蓮に全てを告白するという美恵を必死に止めた。問題にしたくなかった。

時が解決してくれるんじゃないか。
いずれどうにかなるだろうと気楽に思っていた。


「でも、美恵は真面目だったからね。蓮と別れて黒田さんの元に行きたいと言い続けていたらしいのね。嘘をついて蓮の傍にいるのも辛い、って。

そんな折、美恵は妊娠した」


蓮の子ではない、あなたの子だ。美恵にそう言われて、動揺した。
身の振り方を考える時が来たのだ。


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