君にすべてを捧げよう
美恵と結婚するとすれば、会社を去らなくてはいけない。
人気作家の彼女を寝取ったのだ、平然と仕事を続けられない。
今までの問題児ぶりを思えば、左遷は当たり前だろう。
自分は、編集という仕事を手放したくなかった。
なにより、坂城蓮という作家と、もっと一緒に仕事をしたかった。
馬鹿な自分は、最悪の事態に至るまで、己の行動の愚かさに気が付かなかったのだ。
大事な仕事のパートナーを裏切った、その重大さに気が付かなかった。
美恵には、堕胎するように頼んだ。
「美恵は、勿論そんなこと了承しない。会社なんて辞めて、他の仕事をすればいい。いっしょに生きて行こうと言ったんですって。
だけど黒田さんは、堕胎費用を美恵に渡して、別れを告げた」
それから数日後、あの事故が起きた。
自分の態度に絶望した美恵が、蓮を巻き添えに自殺したのだと思った。
「自分のせいです。申し訳ありません。何度も何度もそう言って、床に頭を擦りつけてそう言ってた。
美恵が死んでしまって、蓮、廃人みたいになってたでしょう? 執筆どころじゃなくなってた。それが、黒田さんには耐えられなかったのね」
信じられない内容に、震えていた。
足がカタカタと鳴る。
美恵さんには蓮しか見えていないと思っていた。
あたしのように泣くことなどないと思っていた。
蓮に想われて幸せなのだと思っていた。
なのに、あの人も苦悩していたのか。
あたしの想像とはまた別のところで。
人気作家の彼女を寝取ったのだ、平然と仕事を続けられない。
今までの問題児ぶりを思えば、左遷は当たり前だろう。
自分は、編集という仕事を手放したくなかった。
なにより、坂城蓮という作家と、もっと一緒に仕事をしたかった。
馬鹿な自分は、最悪の事態に至るまで、己の行動の愚かさに気が付かなかったのだ。
大事な仕事のパートナーを裏切った、その重大さに気が付かなかった。
美恵には、堕胎するように頼んだ。
「美恵は、勿論そんなこと了承しない。会社なんて辞めて、他の仕事をすればいい。いっしょに生きて行こうと言ったんですって。
だけど黒田さんは、堕胎費用を美恵に渡して、別れを告げた」
それから数日後、あの事故が起きた。
自分の態度に絶望した美恵が、蓮を巻き添えに自殺したのだと思った。
「自分のせいです。申し訳ありません。何度も何度もそう言って、床に頭を擦りつけてそう言ってた。
美恵が死んでしまって、蓮、廃人みたいになってたでしょう? 執筆どころじゃなくなってた。それが、黒田さんには耐えられなかったのね」
信じられない内容に、震えていた。
足がカタカタと鳴る。
美恵さんには蓮しか見えていないと思っていた。
あたしのように泣くことなどないと思っていた。
蓮に想われて幸せなのだと思っていた。
なのに、あの人も苦悩していたのか。
あたしの想像とはまた別のところで。