君にすべてを捧げよう
「でもね、蓮、それ知ってたの」

「え?」

「二人のこと。知ってた、って言ったわ。美恵が黒田さんに捨てられたことも、黒田さんの子を妊娠していたことも。
美恵のことくらい、ちゃんと見てたから、って。
黒田さんの話に呆然としていただけの私たちには、信じられない言葉だった」


蓮は、黒田さんに頭を下げたのだという。
自分が奔放に遊んだから、美恵を放っていたから、こうなってしまったのだ。
愚かな自分を美恵が見限るのは当然のことで、他の男を見るのも当たり前だ。
君も、俺がきちんとしていたらこんな真似しなくて済んだだろう。

ただ、こうして頭を下げに来るほどの勇気があるのなら、美恵の気持ちを受け止めてやって欲しかった、と。


そして、はっきりと言った。


「あれは間違いなく事故だった。雨でハンドルを取られただけ、それだけだから、君のせいなんかじゃないよって。
黒田さん、泣いてた」


黒田さんは、それからすぐに退社したらしい。

瑞穂さんは、いつの間にか二本目のタバコを咥えていた。


「私、知らなかった。美恵は蓮の為に苦しんで、悲しんでたようにしか見えなかった。他の男を想って苦しんでるなんて、全く気付かなかった。
親友何て言っておきながら、ね。
蓮の方がよっぽど、美恵を見てた。情けなかったわ、ホント」


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