君にすべてを捧げよう
「その時にね、めぐるちゃんにも謝っておいてって伝えてたのよ。
あなた、あの時必死に蓮のこと庇っていたでしょ。
蓮は悪くない、って。その通りよ、蓮だけが悪いんじゃなかった」


少しだけ寂しそうに、瑞穂さんは笑った。


「蓮が言わなかった理由は、きっとそこね。あの時、めぐるちゃんがこの話を聞いていたら、美恵を責めたでしょう? それが嫌だったのね。

でも、もう蓮は回復したし、めぐるちゃんにはかっこいい彼氏もできてるし、いいわよね」

「そう、ですね……」


曖昧に笑い返す。

知らないままのほうが、よかったかもしれない。
蓮の、美恵さんへの想いの深さを知るだけだった。
どれだけ愛していたか、知らされるだけだった。


「だから、結構早くから親交は回復してたのよ。
ほら、今の蓮の仕事、あるでしょ?」

「え? ああ、あの、エッチな」

「そう。あれって、私の紹介で始めたの」

「そうなんですか!?」


知らなかった。
でも、そこはずっと不思議だったのだ。

蓮は元々恋愛小説や青春小説ばかりを書いていた。
それが、五年前、離れから出て行ったあとに蓮が発表したのは官能小説だったのだ。
PNも文体も変え、掲載する雑誌も変わった。

あたしはそれに酷く驚いたけれど、その変化の理由を訊くことはできなかった。
あんなことの後で連絡することはできなかったし。どんな形であれ文章を紡ぎ始めたことを、よかったとも思ったから。


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