君にすべてを捧げよう
「エンゲージって、そんなメーカーあったっけ? 赤川さん持ってきてた?」


美容器具のカタログにはそんな名前なかったけど、と首を傾げると、智が優しく、くすりと微笑んだ。


「違うよ。エンゲージリング。貰ってくれないかな」

「え……」

「結婚、してほしいんだ。俺と」



頭の中が、真っ白になった。
今、智は、なんて?


「早いのは、分かってる。でも、本気だよ」

「あ、え? あ、あたしと、結婚?」


おろおろと言えば、智は頷いた。
寝間着代わりの大きなTシャツを着たあたしの手を引き、抱きしめる。


「めぐるが好きなんだ。ずっと支えて欲しい。

結婚してください」


どくん。
心臓が鳴った。

結婚。

そんなこと考えてもみなかった。
付き合うことだけで満足していたから。
でも、そうか。智はそこから先をもう見据えていたのか。

そして、智はあたしを、本当に望んでくれたんだ。
他の誰でもない、あたしを。
こんなあたしを。


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