君にすべてを捧げよう
「お父さん、具合はどうなの?」

「日常生活にはさほど影響ないよ。もう退院してるし」

「よかった。それで?」

「うん。でも、閉店を決めた途端、オヤジがすっかりしょぼくれちゃってさ。自分の店を閉めるのがよっぽど辛かったみたいなんだよね。
居抜きで人に貸せば店は生きるだろって言っても無駄。

で、ついうっかり、俺がそこで店始めるよ、って言っちゃったんだ。他の誰でもない俺なら、話は違うかなって」

「ふうん、うっかり、ねえ?」


そんなはずない。
きっと、決意して言ったに違いない。

くす、と笑うと額にちゅう、と音をたてられた。


「うっかりなの。まあ、立地はいいし、顧客も結構いたし、いけると俺は思ってる」

「智の腕だもん、絶対大丈夫だよ。それにほら、鏑木ベイビーズもいるし」


智の実力があれば、絶対に成功する。
増える一方の鏑木ベイビーズだって、隣県くらい余裕で通うと思う。
既に、通ってきている人たちもいるくらいだし。


「あはは、来てくれたらありがたいけどね。
で、めぐるは店が軌道に乗ったら、来てくれる?」

「え?」


顔を上げて、智の顔を見た。


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