君にすべてを捧げよう
「なに、してるの?」


静寂を破ったのは、智の声だった。
びくりとして振り返れば、眠っていたはずの智が半身を起こしていた。

寝ぼけた様子はない。
はっきりと、あたしを見ている。


「そんなとこで、どうしたの? なにかあるの?」

「え、えっと、いや、その、寝つけ、なく、て……」


驚きすぎて、しどろもどろになる。
起き上った智は、すたすたとやって来て障子を大きく開け広げた。


「…………!」

「……ああ、月が綺麗だね」


こわごわ見れば、蓮はいなくなっていた。
誰もいない庭の、桜の木のてっぺんに、丸い月が浮かんでいるだけだった。


「あれ見てたの? 明日仕事だし、寝ないときついよ?」

「あ……うん」


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