君にすべてを捧げよう
「とりあえず、向こうの部屋から、纏めようかな……」


自室のクローゼット辺りから始めることにした。

簡単なものでいいやと作ったおにぎりを齧りながら中身を掻きだしていると、チャイムが鳴った。
智だろうか、いや、今頃向こうも片づけに追われているはずだけど。

鮭入りのおにぎりを口に押し込んで、玄関に向かう。


「ひゃーい、どなたですかー?」

「俺だ」


まだ咀嚼しきれていない塊が、喉に流れ込んで行った。
げっほげっほと咽ながら、どうしてと思う。
声の主は最初のあの日以来、ここに足を向けることはなかったのに。


「れ、蓮……?」

「ああ。開けてくれ」


呼吸を整えて、そろりと扉を開ける。
いつもの作務衣を来た蓮が立っていた。


「どう、したの……」


近くで見るのは余りにも久しぶりで、声が震えた。
蓮は、あたしを見下ろしてぼそりと言った。


「明日、帰る」

「あ、うん……」

「で、髪、切ってもらえないか」

「え?」

「髪。伸びたから」

「あたしが?」




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