君にすべてを捧げよう
『ここにいても俺は書けない』


それは、もう書かないっていうことだったの?


言葉に突き動かされるように、封筒を受け取っていた。


「ありがとう、めぐるちゃん」


ほっとしたように、瑞穂さんがため息をつく。
封筒を抱えたあたしはぼそりと言った。


「読む、だけです。あたしには、何もできません」

「うん、分かってる。でも、読んでほしかったんだ」


が、瑞穂さんは何かに気付いて再び口を開く。


「あの、できれば」

「すぐ、読むつもりです。今夜で、自分の中に区切りをつけます」

「……そう、ね。そこからは、私が立ち入る部分じゃないわ」


夜更けにごめんなさい、と瑞穂さんは言い置いて、帰って行った。
その車が去っていくのを見送りながら、あたしの心臓は鼓動を早めていた。

読むことは、間違いではないのか。
でも、あたしは、この本を放っておくことはできない。


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