君にすべてを捧げよう
ティーポット一杯の、温かい紅茶を用意した。
本当だったらラブソファがいいのだけれど、黄色の一人掛けソファに身を沈める。
深呼吸を繰り返したのち、震える手で、封筒の中の一冊を取り出した。
『君に捧ぐ調べ 坂城蓮』
上質な黒の表紙に、金の文字。その他には一切の装飾のない本。
瑞穂さんはこれをあたしなんかに渡してよかったのだろうか。
帯もかかっていなかった。
でも、大事なのはそこじゃない。
「坂城、蓮……」
名前を、指でなぞった。
この名を冠した本を見ることなど、もうないのかと思っていた。
嬉しいと、素直に思う。
坂城蓮という一人の作家の、ファンとして。
開きかけて、止める。
少し冷めたカップの中の紅茶を飲んで、深呼吸してから、表紙を捲った。
『男は生まれ落ちた瞬間から、楽師であった。
人々の心に深く響く調べを世に放つことを定められた者であると、この世に産声をあげたその時に理解したのだ』
そんな、冒頭だった。
本当だったらラブソファがいいのだけれど、黄色の一人掛けソファに身を沈める。
深呼吸を繰り返したのち、震える手で、封筒の中の一冊を取り出した。
『君に捧ぐ調べ 坂城蓮』
上質な黒の表紙に、金の文字。その他には一切の装飾のない本。
瑞穂さんはこれをあたしなんかに渡してよかったのだろうか。
帯もかかっていなかった。
でも、大事なのはそこじゃない。
「坂城、蓮……」
名前を、指でなぞった。
この名を冠した本を見ることなど、もうないのかと思っていた。
嬉しいと、素直に思う。
坂城蓮という一人の作家の、ファンとして。
開きかけて、止める。
少し冷めたカップの中の紅茶を飲んで、深呼吸してから、表紙を捲った。
『男は生まれ落ちた瞬間から、楽師であった。
人々の心に深く響く調べを世に放つことを定められた者であると、この世に産声をあげたその時に理解したのだ』
そんな、冒頭だった。