君にすべてを捧げよう
鏑木さんは彼女がカレンダーのように変わる、というのは本店の麻美(まみ)さんからの話だった。
月が替わると彼女も替わるって勢いなのよ、と。


『しかも途切れないのよ、これが。ほとんど間を置かず、新しい彼女ができるの。
鏑木くんと付き合うのって予約制で、向こう10年くらいぎゅうぎゅうに詰まってるんじゃないかって睨んでるんだけど』


誇大表現しがちな人なのでそれを一笑に付したあたしだったが、麻美さんの話が真実だったのかもしれないと思うには2ヶ月で充分足りた。
二号店勤務になってから、既に彼女は2回変わったのだ。
しかも、昨日までさくらちゃんだったのが、翌日には美奈ちゃんと言う風に、本当に間を置かなかった。


予約制は確かかも、としみじみ頷いたものだ。


「そう、珍しいんだよねー」


あたしの言葉は特に不快ではなかったらしく、鏑木さんはうん、と頷いた。


「ここ数年、1週間以上もフリーだったなんて記憶、ないんだよね」

「うわ、すごい。今までの彼女の数って、総勢何人くらいになるんですか?」

「さあ? 数えたことないからわかんない」


わかんない、て。
しかしあのペースだと、5年で50人くらいはいけるのでは?
って、50人てなんだ。すごすぎ。



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