君にすべてを捧げよう
絶望し、楽器を捨てた男に、人は集まらなかった。
音楽を奏でられない楽師など、最早何の価値もない。
取り巻きは去って行き、やがて男は、独りぼっちになった。
それでも、男はそれでいいと思った。
一人きりで死んでいった女のことを想えば、それも仕方ないと思えた。
居場所のなくなった男は、逃げ出すように故郷に帰る。
死に場所を求めたのか、隠れ場所を求めたのか。
ただ、誰にも忘れ去られた場所で、ひっそり身を隠していたかった。
けれど、そこには少女がいた――
これ以上、ページを捲ってはいけない。
ここから、進んではいけない。
そう、思うのに……。
気を落ちつけようとティーポットに手を触れれば、それはすでに、熱を失っていた。
――少女は、男の幼馴染だった。
遥か昔、共に眠り、朝夕を共にしていた。
少女は、楽師ではない、一人の昔馴染みを迎えてくれた。
廃人のようになった男に、少女は献身的に世話をする。
食事を支度し、共に食べる。髪を梳き、服を着替えさせ、日の光を浴びさせる。
返事もしない、木偶の坊に成り下がった男に話しかけ、笑いかけ、離れなかった。
その、打算も何もない、掛け値なしの少女の行動は、男の心をゆっくりと溶かす。
けれど、思う。どうしてこの娘は、自分などに構うのだろう。
才能も何もない、傲慢で最低な自分にそこまでの価値はないのに。
音楽を奏でられない楽師など、最早何の価値もない。
取り巻きは去って行き、やがて男は、独りぼっちになった。
それでも、男はそれでいいと思った。
一人きりで死んでいった女のことを想えば、それも仕方ないと思えた。
居場所のなくなった男は、逃げ出すように故郷に帰る。
死に場所を求めたのか、隠れ場所を求めたのか。
ただ、誰にも忘れ去られた場所で、ひっそり身を隠していたかった。
けれど、そこには少女がいた――
これ以上、ページを捲ってはいけない。
ここから、進んではいけない。
そう、思うのに……。
気を落ちつけようとティーポットに手を触れれば、それはすでに、熱を失っていた。
――少女は、男の幼馴染だった。
遥か昔、共に眠り、朝夕を共にしていた。
少女は、楽師ではない、一人の昔馴染みを迎えてくれた。
廃人のようになった男に、少女は献身的に世話をする。
食事を支度し、共に食べる。髪を梳き、服を着替えさせ、日の光を浴びさせる。
返事もしない、木偶の坊に成り下がった男に話しかけ、笑いかけ、離れなかった。
その、打算も何もない、掛け値なしの少女の行動は、男の心をゆっくりと溶かす。
けれど、思う。どうしてこの娘は、自分などに構うのだろう。
才能も何もない、傲慢で最低な自分にそこまでの価値はないのに。