君にすべてを捧げよう
――男は少しずつ元気を取り戻してゆく。少女の献身的な世話は、心を潤した。
一度は捨てた楽器を、持ちたいと思うようになった。
すっかり動かなくなった手がかき鳴らす音楽は拙かったけれど、それでも音を作り出せることに幸福感を得る自分がいた。
少女はその音をじっと聞き入り、昔のように目を輝かせ、素敵だと言ってくれる。
少女は今でも、自分を最大限に生かせる道を教えてくれると、男は思う。
いつしか、少女を愛し始めている自分に、男は気付いた。
少女の存在がなければ、横で笑ってくれなければ、思うような音が出ない。
少女が聞いてさえいてくれたら、迷わずに求める音に辿り着けるのに。
少女がいなくてはもう、音は出せない。
少女の存在は、男の全てになっていた。
けれど、亡くなった女を思うと、想いを伝えることは躊躇われた。
自分勝手な振る舞いであんなに苦しめた自分を、女は許さないだろう。
女は、死して以来、思い出したように現れては、男を責めるように見ていた。
辛そうに、悲しそうに。
それは、当然だ。
女の命を奪った自分が、何もなかったように生き、幸せを求めていいはずがない。
それに、男は自分が少女を愛し、また、守り続けられるのか不安だった。
自分は素晴らしい男ではない。間違いをまた犯すかもしれない。
その時、自分の全てを受け入れ、認めてくれる少女にまで、自分の全てを否定されたらどうする?
綺麗な瞳の中に、自分への嫌悪が生まれたらどうする?
それが堪らなく恐ろしかった。
少女にだけは、拒否されたくない。嫌悪されることが、耐えられない。
全てだと思う存在に、否定されたくない。
一度は捨てた楽器を、持ちたいと思うようになった。
すっかり動かなくなった手がかき鳴らす音楽は拙かったけれど、それでも音を作り出せることに幸福感を得る自分がいた。
少女はその音をじっと聞き入り、昔のように目を輝かせ、素敵だと言ってくれる。
少女は今でも、自分を最大限に生かせる道を教えてくれると、男は思う。
いつしか、少女を愛し始めている自分に、男は気付いた。
少女の存在がなければ、横で笑ってくれなければ、思うような音が出ない。
少女が聞いてさえいてくれたら、迷わずに求める音に辿り着けるのに。
少女がいなくてはもう、音は出せない。
少女の存在は、男の全てになっていた。
けれど、亡くなった女を思うと、想いを伝えることは躊躇われた。
自分勝手な振る舞いであんなに苦しめた自分を、女は許さないだろう。
女は、死して以来、思い出したように現れては、男を責めるように見ていた。
辛そうに、悲しそうに。
それは、当然だ。
女の命を奪った自分が、何もなかったように生き、幸せを求めていいはずがない。
それに、男は自分が少女を愛し、また、守り続けられるのか不安だった。
自分は素晴らしい男ではない。間違いをまた犯すかもしれない。
その時、自分の全てを受け入れ、認めてくれる少女にまで、自分の全てを否定されたらどうする?
綺麗な瞳の中に、自分への嫌悪が生まれたらどうする?
それが堪らなく恐ろしかった。
少女にだけは、拒否されたくない。嫌悪されることが、耐えられない。
全てだと思う存在に、否定されたくない。