君にすべてを捧げよう
すまなかった。
男は女の幻に心の底から謝罪する。
自分がどれだけ愚かで醜い人間だったか、よくわかった。
本当に、すまなかった。

――もう、いいのよ。

最後に最上の笑顔を見せた女は、もう二度と現れなかった。



男は、少女の為に、少女を想って、尽きた才能を振り絞って一つの曲を作った。
遠くにいる彼女の存在を必死に感じながら、そこにいるのだと思いながら作り上げた曲。

思い出も、幸せも、愛情も、何もかもを詰めた、最後の曲。


これが、世に広まればいい。
皆が口遊めばいい。
男はそう願いを込める。

そうすればいつか、少女の耳にも届くだろう。

彼女がそれを聞いて、微笑んでくれたら。
幸せだと言ってくれたら。
それだけで、自分は幸せだから――




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