君にすべてを捧げよう
「へえ、冷蔵庫がある」

「夏場は結構役立ちますよ。あ、一本どうですか?」

「ああ、これはどうも」


鏑木さんが冷蔵庫の中から缶コーヒーを2本取り出した。
仲良くプルタブをあけ、一服。


「参考になりましたか、坂城さん」

「ええ、すごく。オーナーにもお礼を言っていたと伝えておいてください」


オーナーは、本店から緊急のお呼び出しがかかって早々に帰ってしまっていた。
蓮とまだ話したかったようで随分ゴネていたのだけれど、麻美さんが裕子さんにチクりますよ、と言ったとたん、大人しくなったのだった。


「あれ? なんだ、めぐる。ここにいたのか」


缶が空になったころ、ようやく蓮があたしに気付いた。
今頃!?


「はい、ずっとここにいましたけど」


ぱん、とわざと大きな音を立ててタオルを広げる。
もくもくと干しているあたしを見て、蓮が鏑木さんに顔を向けた。


「タオル干しってアシスタントの仕事だとさっき聞きましたが……」

「ああ、基本的にはそうなんですよ。
でも、ハイネは機嫌が悪くなるとタオル干しに引っ込んじゃうんですよねー」

「なっ!?」


何を言うの、鏑木さん!


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