君にすべてを捧げよう
三田さんというのは還暦を過ぎたおばさまなのだけれど、お見合いセッティングが趣味というとても世話焼きな方である。
今までに十数組の縁談を纏めた、というのが自慢で、その数字は来店するたびに着実に増えている。

そんな方に先日、杯根さんは女としての潤いが足りないと断言されたのだった。

『男性に愛されているっていう自信とか余裕が見受けられないのよね、杯根さんは。
そういうの、ダメよ? いい男性といい恋愛して、いい結婚に繋げなくちゃ」

どこを見たら足りてないと言えるのか知らないが、三田さんは確信をもった口調で言い、最後には、あなたみたいなタイプは初見でお断りされちゃうわよ、と胸に出刃包丁並みの言葉を突き刺してお帰りになったのだった。

ああ、思い返しても酷すぎる。

むう、と鏑木さんを睨んだ。


「えー、そんな怖い顔しなくていいじゃん。
それでですね、ハイネったら次の日にタイトスカート履いてきちゃって。いっつもパンツなのに。
意識してんだなーって思ったらもうかわいくて」

「鏑木さん!!」


そんなとこ見てたの!?
誰も気付いてないと思ってたのに。
ていうか、それって恥ずかしずぎる!


「でも、その日一日限りでスカートは見納めだったんですけどね。ハイネ、なんで止めちゃったのさ?」

「や、その、べ、別にそういうのじゃ!」

「ああ、そりゃあれだ。恥ずかしくなったんだな。変に意識しすぎたんだろ、めぐる」


動揺したあたしに、はは、と笑った蓮が、ふと首を傾げた。


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