君からはもう逃げられないっ!!


はっとし、顔を左右に振り元の状態に戻す。


いまだに先輩は笑っている。


「いつまで笑ってるんですか!!?」

「あ〜いや、ごめんね」

先輩はやっと笑いを止め、笑いすぎたせいなのか涙腺が緩み目じりに涙が溜まって、それを左手の人差し指で拭う。


いつまで笑ってるんだか……。

っていうか、なんで笑ったのかがさっぱり分かんない。


この人、変人?


「君が面白くて」

「え?」

「さっきのようなことを言うと、大抵の人は逃げるか、暴力に至るわけだけど。君はどうして即したの?」


どうしてって……。

そんなことを言われても。


「普通に即答しますよ」

「普通か……」

それも案外いい答えなのかもしれないと、ぼそりと呟いた先輩。


疑問符を浮かべるわたしに先輩はそっと微笑む。


そして、先輩は左手を差し出した。

何?

えっと?


「握手。お近づきの印に」


「え? あ、……はい」


握手って……今どきする人いるんだ……。


わたしの人生初の握手は先輩でした。


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