君からはもう逃げられないっ!!



少し控えめでゆっくりと、わたしも左手を差し出す。


きゅっとしっかりと握られた手。


その握る手は、汗っかきの人みたいにぬめっとしていなくて、


冷え性の人みたいに冷たくもない。


ちょうどいい温度だった。

わたしの手は氷みたいに冷たい手だったから、先輩の熱を吸い取ってるじゃないかと思うほど……。


温かな温度が、わたしの手の先から芯まで溶け込んでいくような――

お互いの温度が交わっていく。


手だけなのに……。


握ってる手を見つめる。


(細くて綺麗……。まるでピアニストいいえ、ヴァイオリニストみたいな指だ……)

白磁の細長い指……陶器みたい――。


爪も長いってほどじゃなく、きちんと切りそろえてる。

容姿だけじゃない。

こんな細かいところまで


『繊細』


そんな言葉が似合うくらい


この人は、全てに当てはまっている。




(男の人の手って……大きいんだ。お父さんの手しか握ったことないけど……。


っていうか、この人男だよね? うん、少なくとも制服はうちの男子の制服だね!)


視線を手から先輩に移す。


先輩はじっとわたしを見つめていた。


「……」


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