君からはもう逃げられないっ!!
「あだ名だけど」
夢の世界から現実の世界へと戻って、聞こえていたこの人の言葉を漸く理解する。
彼はわたしに呼ばれたのだと思ってこっちに向かったのだろう。
「あ、はい……知ってます」
この学校で知らない人はいないだろう。
何故ならこの人は有名だから……。
そうこの人は――、
「あ、いた! 副会長ー、サクラ会長を見つけました!!」
上から声がして、見上げてみると、屋上からフェンスに身を乗り出した一人の男子生徒がいた。
恐らく、この人――サクラ先輩の仲間であろう。
「……っち、折角休もうと思ったのに……」
苦渋な顔をする先輩は舌打ちをする。
(サボりですか……)
「えっと……あの……」
「あ、見つかっちゃったから、もう行かなきゃ」
と言い残し、先輩は去っていこうとしたが、
「そうそう、そこの1年男子。悪いんだけど、お互い同意なら見逃すんだけど、同意してなくて強姦まがいなことするのはお勧めじゃない。っていうか、それ強姦罪にあたるから」
「強姦罪?」
「そう。犯罪ってこと。刑法第117~第180条。ちなみに暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、3年以上の有期懲役に処する。13歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。さらに言うなら、刑法第176条強制猥褻は13歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする」
まるで先輩は、六法全書を読んでいるかのように淡々と言い放ち、男子生徒を愕然とさせた。
「さて、こ――」
「えっと……あの……す、すみませんでした!! 花澤さん、ごめんなさい。じゃ、じゃあ失礼しました!!」
先輩が言いかける前に、男子生徒はわたしに謝り一目散に去って行った。