瞬きさえも忘れていた。
岩本さんは目を見張り、凍り付いたようにその場に固まってしまった。


けれどすぐその表情を緩め、ふっと、溜息のような苦笑をこぼした。



「アイツ……梨乃にそんなことまで話したんだ」

岩本さんが、伏し目がちにポツンと呟く。


そして、再び目線を上げた彼は、酷く辛そうに笑った。


その笑顔が、今にも消えてしまいそうなぐらいに儚く見えて、胸がぎゅうっと締め付けられる。



「知ってたんですか?」


恐る恐る問えば、岩本さんはコクッと小さく頷いた。



「一緒に暮らしてたら嫌でも気付く。病院行ってる様子も全然ないし。

それに調べたんだ。お腹の子の父親が俺だとしたら、もう7カ月に入る。あんな……体型が全く変わらないなんて、いくら痩せてる陽奈乃でも有り得ないでしょ」



「気付いてたならどうして……」


(私のところに戻って来てくれないんですか?)



その続きは、どうしても言えずに呑み込んだ。


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