瞬きさえも忘れていた。
「ごめん、そんなことが言いたかったわけじゃないんだ。あのね、余計なお節介かも知れないけど――

岩本くんと連絡取ってみたらどかな?」


最後の一文は自信なさげにボソボソと。

でも、吉田さんが心から私のことを思って言ってくれていることが、痛いぐらいに伝わってきた。



「ありがとうございます」

とりあえすは礼を言って、ほんの少し考えてみた。


けれど何もわからなくて。

私はどうすべきか、私はどうしたいのか、何も……。



「正直、急に言われても、どうしたらいいかわからないです。今、頭ん中が混乱してしまって……。

じっくり考えたいと思います。教えてくれて、ありがとう」


心中をありのままに伝えたら、吉田さんもホッとしたように笑みをこぼす。



「お礼言われることなんて、何も。ただ、梨乃ちゃんには幸せになって欲しいなぁって。っていうか、幸せになる権利があると思う」

吉田さんは、冗談めかして笑い混じりに言った。



「私もそう思います。幸せになりますよ、もちろん。今でも十分、幸せですけど」

自分で言っておきながら、何だか妙に可笑しくて、思わず笑い声を漏らしてしまう。



「うん」

と小さく頷いて、吉田さんもつられるように笑った。


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