瞬きさえも忘れていた。
目的の場所は、都心から少し離れたところにあった。


建物はドッシリとした大型倉庫。でも一歩店内に踏み入れば、そこはお洒落な洋風居酒屋だった。


大勢の若者で賑わう店内に、新郎新婦の姿は見当たらない。



祝福? 嫌味? どちらを伝えに来たのかも分からぬまま、意気込みだけは一人前のつもりだったけど、いざとなったら足が竦んで動けなくなった。


来る途中買った花束を両手で抱きしめ、出入口の端っこに、ただ立ち尽くしているだけの私。



「こんにちは。受け付けさせてもらっていいですか? こちらの名簿のご自分の名前のところに丸をお願いします」

受付を任されているらしい女性に声を掛けられ、彼女に入口すぐ横のテーブルへと案内された。


名簿に並んでいる名前を上から下へと流し見て、適当に女性の名前を選んでそこに、手渡された鉛筆で丸を書き込んだ。



写真撮りますねー、と当たり前のようにポラロイドカメラを向けられ焦る。


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