瞬きさえも忘れていた。
「待って! 写真は……」

右掌を彼女に向かってかざして、それを阻止。



「写真の下にお祝いメッセージ書いて貰ってるんですけど……無理ですか?」

申し訳なさそうに言われ、逆に私の方が申し訳なくなる。


けれどコクッと小さく頷いて、「ごめんなさい」と謝った。



隅っこの空いている席に、一人ポツンと腰掛けた。


主役不在にも関わらず盛り上がる場内。その喧騒の中、知り合いなど一人も居ない私は身じろぎもせず、どうか誰の目にも留まりませんようにとただ願う。



けれど、

「飲みもんとか持ってこようか?」

不意に声を掛けられ視線を上げれば、どちらかといえば小柄の男性が私のすぐ傍らに立っていた。


眼鏡をかけているせいか、知的な印象。

歳は多分、二十代後半。雰囲気は落ち着いているけど気さくな感じの、いわゆる好青年だ。



「いえ、すぐに帰りますから」

無理矢理に微笑んで、やんわり断った。


すぐさま逃げるように視線を落として俯き、私に構わないでという意思表示。


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