瞬きさえも忘れていた。
振り返ってダイニングの壁掛け時計を見れば、午前0時を過ぎていた。



「二時間ぐらい寝ちゃったんだ」

ボソリとこぼせば、岩本さんは靴箱の上に無造作に置いてあったキーを掴み取って、

「俺が悪い。完全に気が緩んでた。ほんと、ごめん」

と、何故だか申し訳なそうに謝る。



その意味もわからないまま靴を履き、手を引かれて駐車場へと階段を下りた。




赤信号に引っ掛かって車を停車させた岩本さんは、突然、ハンドルの上に両腕を組んで、その中に顔を埋めた。



「岩本……さん……?」

恐る恐る声を掛ければ、

「鳴瀬さんの親に何て言えばいい? 上手い言い訳が全く思い浮かばない」

絶望に苛まれた声で小さく呟いた。



「別に何も言わなくても……。多分もう、寝てるし」


「心配してんじゃない?」



ああ、それで。

岩本さんは、あんなにも慌てていたんだ。


思わず、クスッと小さく笑い声を漏らした。


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