瞬きさえも忘れていた。




自宅前まで来ると岩本さんは、ハザードランプを点滅させながら車を左に寄せて停車した。



「降りれる? ケツ、引っ掛からない?」

そんな意地悪を言って、涼やかな微笑を浮かべる。



「降りれます! スリムですから」

躍起になって言い返せば、フッと小さく吹き出し、クツクツ愉しげに笑った。



エキゾチックで妖艶な笑顔を、ドキドキしながら眺めていた。




『私たち、付き合ってるってことでいいですか?』


――――聞きたいけど、否定されるのが怖くて聞けない。

面倒くさい女って思われたくない。



「おやすみ」

低い囁きが私の鼓膜から染み込んで、全身までも痺れさせる。

と、不意に私の視界が影に包まれた。咄嗟に目をつぶれば、唇にふんわりと柔らかい感触が。


本当に一瞬のことで。でもキスされたのだという自覚はあった。



ゆっくりと瞼を押し上げ、呆然として岩本さんを見詰めた。


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