溺愛MOON
5分後に本当にカキ氷を持って戻って来た彼は、稲垣学(いながきまなぶ)と名乗った。

年は二つ年上の25歳。

そんなプロフィールを聞いているうちに、やっぱりこれはナンパなんだろうかと今頃になってそんな考えが浮かんだ。


男の子ばかりのグループに冗談交じりでナンパされたことなら、今までだってある。

だけどこの離島に一人で訪れる若い男性なんて滅多にいないし、何より彼がスーツ姿だから恐らく仕事でここを訪れたんだろうとタカをくくっていたのに。


だけどカキ氷を買ってきてもらった手前、態度を急に硬化させるなんてこともできずに、私達は名前と年を名乗り合った後、カキ氷を食べ始めた。

私はカウンター内で、彼はお客さん用のベンチに座って。


カウンターを挟んだこの距離感、他人が見たらさぞかし変だろうなあと思いながら、あっという間に溶けていくカキ氷を懸命に掬った。


その間、ずっと無言だったというわけではなく、彼が島のことを聞きたがるから、見どころの案内と私が個人的に好きな景色のスポットをいくつか教えてあげた。

彼は律儀にメモを取り出して内容を書き留めていた。


もしかしたらマスコミ関係の人なのかな?
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