溺愛MOON
ふとそんなことを思った。

観光地だから地元のTVや情報誌で取り上げられることもたまにある。


だけどわざわざスーツを着込んで来る人は珍しい。

一度気になると、どうしても知りたくなって、私はつい、「お仕事でいらしたんですか? 以前もいらっしゃいましたよね」と聞いてしまった。


もしこれがナンパだったら、受け入れ体制万全な娘みたいだ。

むしろこっちがナンパしてるみたいだと気づいて、少し頬を赤くすると、彼はキョトンとした後嬉しそうに笑った。


「すごいね。覚えててくれたんだ」


その反応を見て、しまったと思った。

好意があると勘違いされたかもしれない。


「いえ、あの、スーツで来るお客様は珍しいので」

「うん、そう。仕事だよ。この暑いのに嫌になっちゃうよね」


普通の観光客と違うその反応は、まるでこの島が気に入らないと言われているようで、私は少なからずムッとした。


「海で泳げば涼しいですよ」


だから思わずそんな皮肉を返してしまうと、彼は厭わずに「水着持ってくれば良かったな」と肩を竦めてみせた。
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