溺愛MOON
だけどこれは恐らくナンパの類だから、その気がないなら行かない方がいいよね。


「せっかくですけど私は……」

「何? 彼氏でもいんの?」

「……」


事情を知らない稲垣さんにズバッと聞かれて、私は黙りこんでしまった。


かぐやを彼氏と言っていいのか分からない。

ううん、本当は彼氏なんかじゃないって心のどこかで分かってる。


だから私は今、傷ついたんだ。

他人に言えない明るくない恋愛だから。


「彼氏、はいないですけど……」

「じゃあ、いいよね? こんな所に閉じこもってて、たまには気分転換も必要でしょ?」

「……でください」

「え?」

「こんな所って言わないでください。たかが観光案内かもしれないですけど、ここには必要な仕事です」

「あ、ごめんね。そんなつもりじゃなくて」

「……いえ、私の方こそごめんなさい」


言った自分がビックリした。

何をムキになってるんだろう、私は。
< 107 / 147 >

この作品をシェア

pagetop