溺愛MOON
「早く晴れないかなぁ……」


その夜は雨漏りの音とネズミが騒ぐ音でなかなか寝つけなかった。

私は布団の中であの彼のことをずっと考えていた。


すると夢の中に彼が登場した。

霞がかったもやの中で彼の顔はやっぱり見えなくて、

でも微かに見える口元が微笑んでいる。


そして私に向かって手を差し伸べて、こう言うのだ。

「迎えに来たよ。一緒に行こう」と。


あぁ、やっぱり彼は王子様だったのだ。

私は微笑んで彼の手を取り、その胸に引き寄せられた――途端、


王子様の顔はネズミになっていて、私は大勢のネズミに囲まれていた。


「ネズミの嫁入りだ!」


周りのネズミ達が歓喜の声を上げ、私は全身鳥肌が立って「やめてぇぇ」と叫んだところで目が覚めた。
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