溺愛MOON
蒸し暑さと魘(うな)されたせいでぐっしょり汗をかいて、また壁がガタガタと鳴っていた。

ネズミのせいでこんな悪夢を見たに違いない。


私は奴らがいる側の壁をバンッと叩いた。

するとネズミ達は一斉におとなしくなってシーンと静かになった。


「もぉ、やだ」


頭をグシャグシャとかいて眉間にシワを寄せ呟く。


「早く誰か迎えに来てよー!」


布団に上半身を起したまま、海へと向いている窓に向かって大声で叫んだ。


東京だったらこんなことしたら周りから苦情がバンバン来る。

だけどこの長屋には住人は私ひとり。


誰にも遠慮することがない。


自由。

で……、寂しい。
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