溺愛MOON
「あぁ、水を掻く度に光の粒が手のひらから飛び散るんだ。まるで俺自身が発光してんのかと思った」

「私も。かぐやが発光してるんだと思ったよ。ねぇ、気持ち良かった?」


かぐやが私をきょとんと見返す。


また変なこと言っちゃったかな。

へへ、と照れ笑いで返すと今度はふわっと笑ってくれた。


心臓をずっきゅんと打ちぬかれた気がした。


「気持ち良かったよ」

「……そっ、か。いいなぁ」

「アンタも泳げばいい」

「泳ぎは得意じゃないの。それにあんな風に海が光るの珍しいんだって。かぐやはすっごく運が良かったんだよ」


そして私も。

あんな風に幻想的に輝く彼を見つけられたことに。

とても運が良かったんだと改めて思った。


それから私達はしばらくポツリポツリ語り合った。

かぐやはずっと月を見ていて、私は白い波間を見つめていた。
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