溺愛MOON
「家の雨戸閉めとかないといかんよ」


そういうと中条さんは透明なカッパを羽織って戸を開けた。

あの長屋に雨戸なんてあっただろうか……。

いや、なきゃ困る。窓が壊れる。


傘を広げたけれど、すでに台風特有の生暖かい風は強くなっていて、傘はすぐに風に煽られて意味を成さなくなった。

港に寄せる波はもう大分高くなって、繋がれている漁船達が大きく揺れている。


島に来てから初めての台風に私は不安を募らせた。

防波堤、決壊したりしないよね……。


傘をたたんで防波堤の横を長屋へと走った。

あっという間にずぶぬれになる。

顔を殴るように大粒の雨が叩いてきて、痛い。


履いてたスニーカーの中が雨でぐしょぐしょになって気持ち悪い。

ポケットから鍵を出してガタガタと家に入るときっちり戸を閉めた。
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