溺愛MOON
雨戸を揺らす風と雨の音だけが家の中に響いていた。


何も見えないからつい考え事をしてしまう。


高橋さん、ちゃんと避難できたかな。


ふいに強引に小さな魚の干物を押し付けてくる高橋さんのシワシワの顔が頭に浮かぶ。

こんなひどい雨の中、ひとりぼっちだったらきっと心細い。


「何考えてる?」


暗闇の中ぼんやりと思考の海を漂っていた私をかぐやの声が現実に引き戻す。

私は高橋さんのことを話した。

かぐやはたいして興味なさそうに「ふぅん」と言った。


「かぐやは何考えてた?」


返事はすぐには返って来なかった。


代わりに近くに座っていたはずのかぐやが私の二の腕を掴む。

そのままゆっくりと私を引き寄せて、唇の位置を探るように顔をくっつけてきた。

押し当てられる柔らかい唇に私は目を閉じる。
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