溺愛MOON
高橋さんが私を必要としてくれるから、お年寄りの人達は若い手を必要としているから、その人達を手伝うことは別に苦痛じゃなかった。

誰かにこんなにも感謝されるなんて生まれて初めてのことだった。


大げさだけれど自分の生きる価値を見出せた気さえする。

ボランティアをする人の気持ちがよく分かる。


「香月、楽しそうだな」

「え、楽しくなんて……」


拗ねたようなかぐやの声に戸惑う。


「もっと俺と一緒に居てよ」

「……高橋さんのこと、放っておけないし。まだ台風の片付けも残ってるし。働かなきゃ食べて行かれないし」


かぐやがそう言ってくれて嬉しいはずなのに、私は嘘のような嫌味を口にしていた。


かぐやは働いてもいないし、俗世間との関わりもない。

だけど私は違う。


いつかかぐやが月に還っちゃっても、この地で一人で生きていかなきゃならない。

私を残して行っちゃうくせに、かぐやは我が儘だ。
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