ソラナミダ
「……それは…」
……と、口を開きかけた時だった。
ブー…ブー……
「………。」
私のパンツのポケットで…
携帯が震えていた。
ブー…ブー……
「……鳴ってる。出ろよ。」
「……でも、まだ話…」
「それは、後でもいいから。」
ホラ…、そう言いながら、また困った顔。
「続きを…聞かせて。」
私は携帯を手にとることもなく、博信へと向き直す。
「………。参った。せっかく中断できたっていうのに。」
「今が…話す時だと思う。…お互いの為に。」
「………。そうだな…。」
博信は大きく息をついて、観念したかのように…話し始めた。
「………実は、テレビ局から…話が来てるんだ。」
「て、テレビ局…?」
「ああ。フリーライターの小畑さんが持って来た話なんだけど、テレビ局の宣伝部で…俺を必要としてくれている。」
「…………。」
「いい条件…提示されてさ。」
「………行くの…?」
「や、まだ正式なものじゃないし、時間に猶予もあるから……」
「行きたいの?博信。」
「……お前を置いていけるわけ……」
「そうじゃない。そうじゃないでしょ、博信。あなたは仕事に対してはストイックで…いつも、何かに挑戦していた。やりがいを求めて、ひとつのぬかりもなく。自分を…試すように。チャンス…なんじゃないの?力が認められたんじゃないの?それで、どうして断ろうだなんて考えが…」
「仕方ないだろ!今俺がここを出たら、誰が俺の代わりになる?わこ、お前のこともそうだ。俺の目の届かない所に居て、いつ、どこでどうしてるだなんてどうやって知り得るんだ。お前は俺に会いに来るか?ここ以外で、思いを共有する場があるのか?!」
「……………。」
こんなに…声を荒げた博信は…初めてだった。
「……。木村さんは、この話……。」
「…知ってる。隠すような真似はしたくない。」
「……彼は…、なんて?」
「……。『迷う必要はない。行きたいなら、行けばいい』と。」
「なら……」
「お前も。…そう思うのか?」」
「だって…、」
「『離れてもいい』と?」
「…………。」
「…そうか、そう…だよなぁ……。」