ソラナミダ


「……それは…」

……と、口を開きかけた時だった。




ブー…ブー……



「………。」



私のパンツのポケットで…


携帯が震えていた。



ブー…ブー……



「……鳴ってる。出ろよ。」


「……でも、まだ話…」



「それは、後でもいいから。」



ホラ…、そう言いながら、また困った顔。




「続きを…聞かせて。」


私は携帯を手にとることもなく、博信へと向き直す。




「………。参った。せっかく中断できたっていうのに。」



「今が…話す時だと思う。…お互いの為に。」



「………。そうだな…。」



博信は大きく息をついて、観念したかのように…話し始めた。




「………実は、テレビ局から…話が来てるんだ。」



「て、テレビ局…?」



「ああ。フリーライターの小畑さんが持って来た話なんだけど、テレビ局の宣伝部で…俺を必要としてくれている。」



「…………。」



「いい条件…提示されてさ。」



「………行くの…?」



「や、まだ正式なものじゃないし、時間に猶予もあるから……」



「行きたいの?博信。」



「……お前を置いていけるわけ……」


「そうじゃない。そうじゃないでしょ、博信。あなたは仕事に対してはストイックで…いつも、何かに挑戦していた。やりがいを求めて、ひとつのぬかりもなく。自分を…試すように。チャンス…なんじゃないの?力が認められたんじゃないの?それで、どうして断ろうだなんて考えが…」



「仕方ないだろ!今俺がここを出たら、誰が俺の代わりになる?わこ、お前のこともそうだ。俺の目の届かない所に居て、いつ、どこでどうしてるだなんてどうやって知り得るんだ。お前は俺に会いに来るか?ここ以外で、思いを共有する場があるのか?!」





「……………。」



こんなに…声を荒げた博信は…初めてだった。


「……。木村さんは、この話……。」



「…知ってる。隠すような真似はしたくない。」



「……彼は…、なんて?」



「……。『迷う必要はない。行きたいなら、行けばいい』と。」



「なら……」



「お前も。…そう思うのか?」」


「だって…、」



「『離れてもいい』と?」



「…………。」



「…そうか、そう…だよなぁ……。」





< 176 / 335 >

この作品をシェア

pagetop